1989年より描き始めた「遺されしものへ」シリーズも、30年目を迎えました。常に「邂逅」をモチーフに描き続けてきましたが、1994年1月、ふと旅立ったエジプトとの出合いは、邂逅の不可思議さをますます私の心の内に増幅し、制作への意欲をかきたてて止みません。
「遺されしものへ」とは、遺跡をさすのではなく、実は今ここに生きる我々自身のことなのです。
今、遺跡が私に語りかけてくれます、「遺されしものよ」と。厳然とある『過去』、それをどのように『未来』に伝えていくのか、と。エジプト数千年の歴史を越え、自然と時空との邂逅に、そのメッセージを託して描きたいと思います。そのような気持ちが少しでも伝えることができれば幸いです。
2018年2月
木下 和